読書と言語とQubit

物理系大学院生の趣味日記です。読書記録、学んでいる言語について、研究の話など、雑多にゆるゆると書き留めていきます。

海外大学院入試の基礎知識:推薦状とは?

こんにちは!Kohdaiです。

 海外大学院入試の基礎知識としてGRE、SoPの話をしてきましたが、

 

 

kblack18.hatenablog.com

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今日は最も重要な「推薦状」の話です。

推薦状って先生に依頼したら後はやることないのでは……?

と思ったそこのあなた。

それは非常に正しいのですが、「先生に依頼する」ことが非常に重要なのです。何を当たり前のことを、と思うかもしれません。しかし、しっかりと対策を立てて戦略的に準備をしなくては効果的な推薦状は獲得できません。

それでは海外大学院入試において、推薦状がどういう位置づけでどのように対策していけばいいか見ていきましょう!

 

海外大学院入試における推薦状

結論から言えば、海外大学院入試において最も高い比重を示すのが「推薦状」です。大学にもよりますが、たいてい出願に対して三通ほど推薦状が要求されます。推薦状の入試における役割は、出願者の研究者としての能力をなるべく客観的に測ることです。前回ご紹介したSoPでは出願者の自己アピール力を見たのに対し、推薦状では「周りの研究者から見た評価」という、よりシビアな尺度で能力を見られることになります。

私の指導教官は、「推薦状が学生の能力を見るうえで一番信頼できる」ということを言っていました。

大学院入試に真剣に取り組む前、私は「推薦状って盛って書いたりできるのだからあまり影響しないのでは…」と思っていました。しかし、実は推薦状において「わざわざ悪いことを書く」ことは無いにしても、「能力もないのに盛って書く」ことはほとんどないようです。(学部時代の指導教官談)

推薦状を書く指導教官の立場になってみると良く納得できます。推薦状には指導教官の名前も所属もサインも記載されます。また、推薦状を読むのはその教授の研究仲間や共同研究者である可能性も高いです。そんな中、「推薦状を書く」というのは、そうした研究仲間に対して、送り出す学生の能力を保証する行為になるのです。
もし推薦状に誇張した内容を書いたことでその学生が採用されてしまった場合、その学生は推薦状に記載されているようなパフォーマンスが発揮できない可能性が高いです。その場合、受け入れ先の研究室からすると「話が違う!」となってしまいます。すると、「その推薦状を執筆した教授は信用ならん」という評価になってしまうのです。つまり、学生を推薦するという行為はその教授自身の信頼や評価にも大きく結びついています。そのため、推薦状の執筆者は「事実を述べる」ことしかできなくなるのです。

ちなみに、「受け入れた学生があまりに推薦状の内容と違う場合、推薦元の教授をブラックリストに入れ、そこからの学生は一切取らないことにする」ケースもあるようです……。(学部時代の指導教官談)

このように非常にシビアに能力が評価されるため、推薦状の依頼に対しては、「なるべく関係が長く、自分の研究や勉強のことをしっかり理解してくれている方」にお願いするのが非常に大事です。それでは、具体的に戦略を見ていきましょう。

 

推薦状依頼に際しての戦略

上で書いた通り、推薦状を誰に依頼するのかというのは非常に重要です。下に示すのが一般的な選択肢になると思います。

  • 過去/現在の指導教官
  • 過去の共同研究者
  • (研究インターンなどをした場合、)インターン先の上司や受け入れ先の教授

こうした方々は自分の能力をよく知ってくれている可能性が高いですし、推薦の説得力も強いです。
私自身はこのような考え方はあまり好きではないですが、推薦者が有名な教授であれば当然推薦状も強力になります。そのため、海外学位留学を強く意識している方は、学部や修士の指導教官を戦略的に選ぶことも戦略として重要です。

 

また、推薦状の内容についてですが、

「推薦状は客観的で定量的であるほど良い」

です。

教授に推薦状をお願いする際、推薦状の下書きを求められることがあるかもしれませんが、これを意識しておくと良い推薦状になります。より具体的には、

  • 数値化できるものはなるべく数値化する。(インパクトファクター〇〇の論文に採択された。応募総数〇〇で倍率〇〇の学会に採択された。〇〇人中〇〇人が選ばれる賞を受賞した。学科内で上位〇〇%の成績である。etc...)
  • 優秀な先輩などと比較してもらう。(過去〇〇大学に進学した先輩と比べても遜色ない成果を持っている。etc...)
  • 主観的な内容はなるべく入れない。

といったことが大事になります!

また、こうした内容がなるべく簡潔にシンプルに記載されているほうが、推薦状としては効果的なようです。

 

まとめると、

  • 推薦状は「学生本人の評価」を通して「教授も評価される」という非常なシビアな書類
  • そのため、推薦状には大きな信頼が置かれる
  • 推薦状は具体的かつ定量的、客観的かつ簡潔であるべき

ということです。こうした点を踏まえて効果的な推薦者に推薦状を依頼しましょう!

 

最後に、推薦状を依頼する、というのは、推薦者の貴重な時間や労力を自分のために使ってもらうということになります。その有難さを忘れずに出願を走り抜けてください!

 

海外大学院入試の基礎知識:SoPとは?

こんにちは!Kohdaiです!

先日海外大学院入試の基礎知識として「GRE」という試験の紹介をしました!

 

 

kblack18.hatenablog.com

 


 
今回はより合否を左右する重要な要素、「Statement of Purpose」のお話をしたいと思います!


海外大学院を目指していると、「海外の大学では試験の結果とかじゃなくてエッセイが重視されるんだよ」という話を聞くことがあるかと思います。これはその通りで、日本と海外(特に北米)の大学院入試には次のような文化の違いがあります。

  • 日本:学生の学力を筆記試験で評価。研究に必要なコミュニケーション能力等を面接で評価する。
  • 北米:学生の学力を学部時代の成績で評価。コミュニケーション能力、研究遂行能力などを学生のエッセイや、推薦状から判断する。

海外大学院入試でエッセイや推薦状が評価に使われる理由を、私の知り合いの先生は次のように分析していました。

「一緒に研究するという観点で学生がどれくらい有能かっていうのは、一回や二回喋っただけじゃ実はあんまりわかんないんだよね。だから、学力は学部の成績を参照するとして、推薦状からは教員から見た率直で客観的な能力を見て、学生のエッセイからはwritingの能力とその子のビジョンを見るんだ。

このように、海外大学院入試では「十分な成績が取れていることは前提として」、エッセイや推薦状が非常に重視されます。

「Statement of Purpose」とは「エッセイ」に該当するもののこと。日本語だと「志望理由書」でしょうか。しばしば略されて「SoP」と呼ばれます。

日本の大学院に出願する際も400字程度の志望理由を求められることがありますが、「SoP」はより長い文章を書くことになります。以下では、「SoP」を私が書いた際の戦略や準備についてお話ししていきます!

 

「SoP」の分量

おそらくまず気になるのが、「どれくらいの分量を書けば良いのか?」ということだと思います。これは専攻にもよるかと思いますが、私は800 words程度書きました。あまり短すぎると自分の言いたいことやアピールポイントが入らないし、あまり長いと応募先の教授に興味を持って読んでもらえない可能性がある、というのを考慮してバランスを取った結果です。

 

「SoP」の内容

さて、一番の問題は「果たして何を書けば良いのか?」でしょう。一概に志望先の教授に読んでもらうエッセイを書けと言われても、何を書くべきなのかは非常に悩むと思います。
ざっくり言えば、「SoP」は「自分の大きな目標とアピールポイント」を語るエッセイです。教授に向かって、「自分にはこんな夢があって、自分はその夢を追うのに十分有能で、あなたの下であなたと一緒にその夢を実現させたい」ということを訴えかける文章です。教授はこの文章を読んであなたがどのような人物かを判断するのですが、人気な教授のもとには多くの応募が集まるため、魅力的な文章を書かなければ教授の目に留まる事はできません。

私のSoPの構成はこんな感じでした。

  1. 自分の夢を語る
    『高校生の頃からこの世の自然法則を記述する物理学に魅せられ、研究者になることを志して大学に進学した。現在は未来の新技術である量子コンピューターに関わる理論研究の道に進みたい』
    みたいな内容を第一段落で書いたと思います。なるべく壮大な夢を語っているような口調で書きました。
  2. その夢に向かって大学学部時代にどのような努力をしてきたか語る
    『海外研修や海外インターンに行って、研究の場面で通用する英語力を身につけた。教授に積極的に声をかけて、自分から能動的に研究に取り組み、こんな成果を出した』
    という内容を数段落使って書きました。なるべく自分の経験を面白そうに書く努力をしました。読んでいる教授に飽きられてしまったら困るので…。
  3. 大学院に入ってからの目標を語る
    『〇〇大学では量子情報の研究に力を入れているため、そちらの大学院で〇〇のような研究を行って、分野に貢献したい』
    という内容を一段落ほど使って書きました。ここでは各大学の特色に合わせて、自分の今やりたいことのアピールをします。2でアピールしたスキルとうまく結びつけられればなお良いでしょう。
  4. まとめ+志望先の教官へのアピール
    最後に簡単に内容をまとめます。ここで、志望先の教授の研究内容などと絡めて「あなたと研究がしたいです!」という気持ちのアピールができるとなお良いです。

「SoP」の準備

さて、どのように準備を行うかですが、私は大体2ヶ月ほどの期間を取りました。タイムテーブルは以下の通りです。

  • (1週間程度)
    まず書く。とにかく一回最後まで書き切ってみる。この段階では文章が上手くかけていなくても良いので、とにかく何かしら文章らしきものが完成しているということが大事。
  • (1週間)
    インターネットで同義語やコロケーションなどを調べながら、なるべく正しく魅力的な英語に近づけていく。全体の構成についてもここで整える。
  • (残りの1ヶ月半)
    なるべく多くの信頼できる人(指導教官、研究室の先輩、英語の先生、ネイティブの友人など)に添削をお願いする。「英語ができる人」=「英語の文章が上手い人」ではないので要注意。また、添削は相手の貴重な時間を奪う行為なのでお願いは呉々も丁寧に!

私はあまり多くの方に添削をお願いできず、少々準備不足となってしまって後悔しています。
大学院入試は自分の人生を賭けた戦いです。SoPは自分のこれまでの人生を詰め込んで指導教官にアピールする非常に重要なエッセイなので、是非全力で準備してみてください!!

それではまた!

 

海外大学院入試の基礎知識:GREって何?

こんにちは! Kohdaiです!

普段は私自身の体験を通して、皆様に海外大学院入試の話をしています。

良ければ私の留学挑戦記も是非ご覧になってください!

https://kblack18.hatenablog.com/entry/2019/10/07/064849

 

さて、今回お話しするのは、大学院入試の基礎知識の一つ、「GRE」についてです。

GREって何…?と思う方も多いと思います。事実私が海外大学院を志望した当初もそうでした。しかし「GRE」は海外大学院入試に挑戦するうえで避けては通れない重要なプロセスの一つです。そこで今回は、GREについての基礎知識を解説していきます!

そもそもGREとは

 GREとは、Educational Testing Service (ETS)によって提供されているテストであり、主に北米の大学院入試の際に利用されます。(https://www.ets.org/gre)
ETSはTOEICやTOEFLも提供しているため、聞いたことがあるという方もいるかもしれません。GREの正式名称はGraduate Record Examinationsで、その頭文字をとってGREと呼ばれています。このテストの目的は、大学院出願者の「基礎学力」を試すことです。多くの北米の大学院では出願の際にGREの成績を提出することが求められます。

なあんだ基礎学力か

と思う方もいるかもしれません。しかし基礎を侮るなかれ。GREはしっかり対策しないと大失敗をし得るテストです。以下では、GREのテスト内容、形式、対策についてお話していきます!

 

GRE General と GRE Subject

一口にGREと呼ばれる本試験ですが、実は、GREには大きく分けて二種類のテストがあります。一つはGRE Generalというテスト。一般的にGREといった場合はこちらの試験を指すことが多いみたいです。ここでは英語力と数理解析能力を問われます。もう一つはGRE Subjectというテスト。これは専攻に応じた専門知識を問うテストです。

 

さて、GRE Generalについてですが、以下の内容をテストされます。

  1. Verbal Reasoning (英語読解能力)
  2. Quantitative Reasoning (数理的処理能力)
  3. Analytical Writing (英作文能力)

ん?待てよ?英語の読解と作文?それTOEFLとかで良くない?

と思ったそこのあなた。

そう、その通りです。

GREで求められている英語力はTOEFLで求められているものとは少々違うのです。端的に言えば、GREで求められているのは「国語としての英語力」、つまりネイティブスピーカーが教養として持っておくべき英語力、また英語を用いた論理的思考力です。TOEFLが外国人向けの基礎英語力テストであるのに対して、GREはネイティブレベルの基礎英語力を持っていることは前提として作られています。日本人が日本語を母語としておきながら大学入試の国語のテストで高得点を取るのが難しいように、GREの英語はネイティブでもしっかり対策しないと相当難しいようです。

 

まずはVerbal Reasoningから見ていきましょう。はっきり言います。ここが最難関です。

もう一度言います。ここが最難関です。

端的に言えば、

  • 文章に空欄があって、その空欄に最も適する単語を選択肢の中から選ぶ問題
  • 短めの文章の読解問題

を解くテストなのですが……なにせ単語のレベルが高すぎて全く手が出ない!

また、30分でおよそ20問を解くのですが、時間が全く足りない!

「なんやねんこの単語は」のオンパレードです。事実ネイティブの友達に聞いてもGRE GeneralのVerbal Reasoningには相当苦労したと言っていました。

さらに僕の日本人の友人はGREの勉強で覚えた単語を英語ネイティブのカナダ人の彼女に使ってみたところ「気持ち悪!」と言われ相当凹んでいました。(あくまで個人の感想です)

つまり、ネイティブであってもそのレベルでなじみのない単語で構成された文章を読んで問題を解かないといけないのです。これはえげつなさすぎる。

有効な対策はただ一つ。ひたすら単語を勉強するのみです。

私はこちらの「iKnow! (https://iknow.jp/)」というアプリを使って勉強していました。無料サービスではないですが、その分勉強効果は非常に高いと思います!
iKnow!では問題を解きながら単語を覚えられる上に、間違えた単語を重点的に復習させてくれるので、使いながら覚えたい派の私にはあっていたように思います。
そのほかにも様々なアプリや問題集があるようなので、是非ご自分に合った方法を模索してみてください!

二つ目のパートはQuantitative Reasoning。ここでは数学(というよりもはや算数)の問題を解くことになります。日本の中学、高校数学を経験していれば難易度自体は易しいと思います。ただ数学チックな専門用語はしっかり勉強しておく必要があります。そこさえ押さえておけば心配する必要はないでしょう。本番では35分で20問ほどを解くことになります。練習問題集などで形式慣れはしておかないと時間が足りなくなるかもしれません。

最後にAnalytical Writing。ここが一番重要と言えるかもしれません。現にここの点数を「論文を書く能力」として重要視している先生もいらっしゃるみたいです。試験本番では30分のWriting taskを2セット課されます。早く正確に論理を構成する力、言いたいことをしっかりと書ける英語力、60分ひたすら英語を書き続ける体力が求められます。私は問題集で練習をしながら、書いた文章を帰国子女の友人に添削してもらっていました。実は私は本番のWritingの点数があまり良くなかったので、もっと対策しておけばよかったなあと少し後悔しています。

 

GRE Generalの点数は、VerbalとQuantitativeが130-170の間の1点刻み、Analytical Writing は0-6の間の0.5点刻みで付きます。

僕が聞いた話では、日本人だとVerbalで150点、Quantitativeで満点、Analytical Writingで3.5-4点を目標にするのが良いということでした。ただし、本当に足切り程度にしか見られないため、多くの時間を使いすぎるのはもったいないです。一か月ほどの勉強時間を取っておけば十分でしょう。

 

GRE Subjectについて。こちらは専攻に応じた専門知識を問うテストとなります。科目としては以下のものが用意されています。

  • Biology
  • Chemistry
  • Literature in English
  • Mathematics
  • Physics
  • Psychology

大学や専攻によっては必要ないこともあるようなので、自分の志望に合わせて受験を検討してみて下さい!

ちなみに、GRE Generalはテストセンターなどで頻繁に(東京などでは祝日を除いて毎日)開催されていますが、GRE Subjectは年3回ほどしか開催されず、しかも開催場所は日本だと「東京」「福岡」「沖縄」など非常に限られているので受験の際は注意してください!

私はPhysicsを受験したのでPhysicsの話をすると、試験時間は3時間ほどで問題は約100問。物理の色んな分野から基本問題が出ます。問題の難易度は高くないのですが、ちゃんと練習していないと確実に時間が足りなくなります。

僕はこの問題で練習していました。

 

Conquering the Physics GRE

Conquering the Physics GRE

  • 作者:Kahn, Yoni
  • 発売日: 2018/04/30
  • メディア: ペーパーバック
 

 Generalと同様、Subjectも1か月ほどの準備期間を取って本番に臨みました。私は大体95%を目標に勉強していたと思います。

 

GREは大学院学位留学を考えるなら避けては通れない道です。
決して評価の比重が重いわけではありませんが、大失敗しないためには対策は不可欠です。ここで余計な心配をしなくてもよいように、しっかりと対策をしていきましょう。

コロナウイルス感染拡大のため緊急一時帰国! 空港検疫の状況と留意すべきポイントまとめ(4/5時点)

こんにちは!Kohdaiと申します。カナダで物理学系の大学院生をやっています。

日々の研究に追われてカナダで冬を越している間、COVID-19によるself-isolationを経験し、水際対策強化実施中の日本に帰国し、検疫での検査を経験するという怒濤の日々を過ごしてきたので、せっかくなので記事にまとめたいと思います笑


日本の帰国者への対応を知りたい方、現在海外に在住していて空港での検疫の様子等を知りたい方にもおすすめの記事になると思います!

 

さて、私が真剣に帰国を検討したのは3/31のこと。そのきっかけは、在カナダ日本大使館からワーキングホリデービザの方向けの帰国検討を勧める通知が出されたことでした。私は長期滞在予定の学位留学生ですし、空港へ行き飛行機に乗ること事態がリスクとなってしまう現状のため、カナダへ残る選択肢もかなり有力だったのですが、以下のことが決め手となって気持ちは帰国へ傾いていきました。

  1. カナダの感染者が指数関数的に増加しており、お隣アメリカの感染者数もとんでもないペースで増加していたこと。
  2. そもそも今夏に帰国しなくてはならない都合があり、帰国勧告が一部滞在者に出されたという事は、今後すぐに帰国が困難になっている可能性があるということ。
  3. カナダではバス、トイレ、キッチン共用のシェアハウスに住んでいるため感染リスクが少々高いこと。
  4. 私がやっている研究はパソコンが有ればどこでもできる理論研究なので、実質どこにいても仕事ができること。

そうは言っても航空券は高いし、時差があるためミーティングには多少の支障が出るし、なにより飛行機内での感染リスクが高く、私を迎えに来てくれる家族への感染リスクも考えられるため、指導教官、カナダ現地の大家さん、両親とそれぞれ十分話し合い、最終的には4/1に4/4発のエアカナダの航空券を取得しました。(4/1に日本の水際対策が強化され(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C046.html)、
その後4/9以降の日本行きのエアカナダ便が全てキャンセルされてしまったので、帰国することを考えれば実はこれがベストの判断でした。)

旅程的にはこんな感じです。

  • 8:30 トロント発 10:30バンクーバー着 AC103便
  • 13:30 バンクーバー発 15:30 成田着 AC003便

 

さて、帰国にあたってやはり一番のネックになるのは飛行機内での感染リスクが高いことです。インターネットで調べたり、指導教官や大家さん等にアドバイスを仰いだりして、最終的に次のような対策を取っていきました。

  1. 顔はマスク+メガネでガード。飛行機内ではフード付きの上着を着て頭もカバー。
  2. 電子機器はラップで保護し、必要最低限の時しか取り出さない。
  3. 座席の膝掛けやスクリーンはアルコール消毒し、手も定期的に消毒。
  4. なるべく飛行機内で物を食べない。

飛行機内では座席が近くなった留学生の子と(距離を保ちつつ)話したり、映画を見たりして過ごしました。

飛行機内では一応食事が提供されますが、感染リスクを減らすためサンドイッチや水などの軽食の提供でした。

 

空港についてからのざっくりとしたタイムラインはこんな感じ。

 飛行機が着陸すると、乗客が3つのグループに分類されます。

  1. 国際線に乗り継ぎ日本に入国しない人
  2. 自宅待機をする人で、到着日に家族や友人の迎えが来れる人
  3. その他(自分で確保したホテルに待機予定の人、自宅待機をする予定だが迎えが当日来れない人、現状帰れるあてがない人)

グループ1の人は乗り継ぎ時間を考慮し、着陸後20分ほどで飛行機を降りるようにという指示がありました。私が乗っていた便からは韓国への乗り継ぎをする方が数名降りていきました。

グループ1の人が降りたあと、成田空港の検疫官が今後の流れを説明してくれました。検疫は非常に狭く感染リスクを少しでも減らすため、10-15名ずつ案内するとのこと。

待ち時間には、配布された検疫に際して必要な書類に必要事項を記入していました。

検疫にまず案内されるのはグループ2のお客さんで、座席が前の方の人から15名ずつ検疫へ向かいます。前の人たちがでてから次の人たちが呼ばれるまでは大体20分くらいでしょうか。ここでは呼ばれるのをひたすら耐えるフェーズになります。私はグループ3だったため、相当待つことを覚悟しながら読書をしていました。

着陸から3時間後、ついにグループ3の乗客が検疫に呼ばれます。飛行機を降りると検疫まで列ができており、ここで1時間弱待つことになりました。
(検疫までの列はSocial distancingに留意した並び方で非常によかったです!

検疫にたどり着くと、まずは体温測定、そして書類の確認、最後に鼻の粘液採取をされます。検査は一瞬で、5分もかかりません。

検査が終わると、グループ3の私たちは空港スタッフの指示に従って入国手続きをし、荷物を受け取り、税関を通り抜け、ようやく空港ロビーにたどり着きました。

 

グループ2の方は家族などからの迎えがあり次第この時点で自宅に戻れるようです。

グループ3に該当する場合、検査結果が出るまで国指定のホテルで待機することになるのですが(検査結果待ちの間の滞在は無償です)、シャトルバスが来るまでの間パーテーションで区切られた空港内のスペースで待機になります。私はここで1-2時間程度待ちました。

ホテルは空港近くの東横インです。ホテルへ向かうシャトルバスは座席がビニールで覆われ運転手の方も防護服で完全武装状態でした。

ホテル内では勝手に出歩くことは一切許されず、食事もお弁当が部屋まで支給されます。

私は到着から2日後の4/7の朝7時に陰性の結果通告を電話で受け、家族の迎えで自宅へと向かいました。

ホテルからは陰性の結果通告を受けたらその正午までに退出することをお願いされました。陽性の場合は別の指示があるとのことでした。

なお、14日間の待機場所として成田空港や羽田空港近くのホテルに滞在する場合はシャトルバスが出るようでした。

陰性結果が出た後の滞在先のあてが無かったり、帰るための足の準備が無かったりする場合は、結果待ちの間に自分で確保する必要がありそうでした。なお、ホテルに関しては厚生労働省の事務局に相談すれば紹介してもらえるみたいです。(14日間の待機中のホテル滞在については自費負担となります。)

 

無事帰宅した今は治らぬ時差ボケと戦いながら二週間の自宅待機中です。

今帰国を検討されている方、帰国予定の方へ。
飛行機内や検疫の感染リスクは確かに高く、不安に思うことも多いと思います。しかし、「感染しない努力」も当然大事なのですが、「自分が万が一保菌者だった際に周りに移さない努力」が非常に重要です!(マスクを正しくつける。Social distancingを徹底する、など)

また、状況は刻一刻と変化していますので、常に最新情報を追うことをお勧めします

検疫での待ち時間は非常に長くなることも想定されますが、日本でのコロナウイルス感染拡大を防ぐために不可欠な措置の一つですので、頑張って乗り越えていきましょう!

海外に残る決断をされた方がご安全に過ごせること、帰国を決めた方が無事ご帰国できることを祈っています。

留学挑戦記④:出願の長い道のり Part2

こんにちは!Kohdaiです!

前回から、海外大学院の出願体験の話をしていました。ここで大学院出願のプロセスを思い出すとこのような感じです。

  1. 出願校、志望指導教員のリスト作成
  2. テスト受験(GRE)
  3. 推薦状依頼
  4. Statement of Purpose 作成
  5. 出願

前回は志望研究室のリスト作成の話をしましたが、今回は2、3、4番の話をしていこうと思います。特にここのプロセスは日本の大学院出願との違いが顕著に現れる部分なので、準備が非常に大変かつ重要になります。

 

さて、私がどのような経緯をたどったかお話しする前に、まずは日本の大学院入試と海外の大学院入試の違いを見ていきましょう。

日本の大学院試のプロセスは以下のようになることが多いようです。

  1. 出願書類を大学から取り寄せる。
  2. 出願書類(履歴書、簡単な志望動機)を提出し、受験料を振り込む。
  3. 指定日に試験を受ける。

一方私が第一志望にしていたWaterloo大学の出願は次の通りです。

  1. 出願用のWebページに登録する。
  2. 指定のページで経歴を記入する。
  3. 外部試験(GREと英語の試験)の成績を送る。
  4. 志望動機(Statement of Purpose)を提出する。
  5. 推薦状を書いてくれる先生の連絡先を登録する。
  6. 受験料を振り込み、出願完了。推薦者が推薦状を送ってくれるのを待つ。

 

赤字で強調した通り、日本か海外かで出願プロセスが大きく異なることが分かります。日本の大学院入試の場合、選考プロセスはほとんど「独自のペーパーテスト+面接」となります。つまり、複数の大学院を志望する場合、それぞれの大学の傾向を踏まえてテストの対策をし、指定日にペーパーテストを受けに行かなくてはならない、ということです。これでは複数の大学院を併願するのは難しく、学部で所属していた大学に出願する学生もかなり多い印象です。

 

一方、Waterloo大学の例で示した海外の大学の出願プロセスを見てみましょう。

そもそも海外の大学院はほとんどの場合独自のテストを用意していません。例えば北米の場合、最低限の学力の担保として使われるのはGraduate Record Examinations (GRE)という共通の試験です。そして、このGREの成績は参考にする程度でほとんど見られていないと言われています。

それでは何を使って学生を評価するのでしょう。

それは「Statement of Purpose」と「推薦状」です。

「Statement of Purpose」というのは、自己アピール、志望理由をまとめたエッセイのことで、一般には「SoP」などと略されて呼ばれます。ここには

  • なぜその分野の研究がしたいのか
  • その研究をするために自分は今までどのようなことをしてきたのか
  • そして自分にはどのような能力があるのか
  • 最終的に自分は何を達成したいのか

を800-1000語ほどで詰め込みます。詳しくは後述しますが、このStatement of Purposeで教授に興味を持ってもらえるか、というのは合否に関わる重要な要素の一つです。

一方、「推薦状」というのは、学部時代の指導教官や共同研究者などに書いてもらう、自分を評価する文章のことです。SoPで書くのが主観的な自分の評価なのだとすれば、推薦状に書かれるのは「他者から見た客観的な評価」です。そのため、大学院入試の場に於いても推薦状が一番重視されると言われています。推薦状で重視されることはただ一つ、「どれだけ定量的に評価されているか」、これだけです。言い換えれば、自分の実力が最もシビアに出る場であるともいえるでしょう。

 

さて、出願にあたって僕が通った道のりを見ていきましょう。

まずはGREについてです。このテストの細かい内容については別記事で解説する予定ですが、大まかに分けてGREには英語と数理の基礎能力を測るGeneralというテストと、専門的な基礎知識を測るSubjectというテストがあります。

Generalのテストについては、私は8月頃に受験しました。実は東京だとGRE Generalはテストセンターなどでほぼ毎日受験できます。値段は180米ドルと高いので、私は一発勝負で全力を注ぎました。
Subjectについては11月に受験。実はSubjectテストは開催回数が年三回ほどと相当少なく、日本で受ける場合は日本で受ける場合は東京、福岡、沖縄と非常に限られた場所でしか開催されないので、アンテナを張っていないと受験を逃してしまいます。私はプリンストンへの留学と時期がかぶっていたので現地プリンストンでの受験となりました。

GREテストは基本的に参考程度に見られるのみであり、評価に大きな影響を及ぼさないとは言われていますが、やはり対策しないと十分な点数は取れません。私はGeneralについてもSubjectについても問題集を購入して、1か月ほどは問題集をやりこんで対策していました。

 

さて、続いては「SoP」ですが、こちらは基本的に10月頃に準備をしていました。準備の流れとしては、

  • 書き方をググる
  • とりあえず書いてみる
  • 添削をもらって直す

の繰り返しです。今はインターネットが便利な時代。検索すれば多くのPh.D. studentsたちがSoPのアドバイスを発信してくれています。また、私のWritingの際の信条は「まずとにかく書いてみる」こと。そこで、ダメダメなエッセイでもよいからとりあえず自分なりに書いてみるところから始めました。ただ、論理構成の流れ

「自分には成し遂げたい夢があって」
→「そのために自分はこんな実力をこんな方法で蓄えてきて」
→「大学院ではこんなことを成し遂げたいという明確な目標があって」
→「その実現のために是非先生の研究室で研究したい」

だけは意識するようにしていました。

添削はエッセイが得意な友人と奨学金団体の先生にお願いしました。今思えば、海外留学中の先輩や、ネイティブの友人にも頼むべきだったと反省しています。

 

「推薦状」について。これは誰にお願いするかが非常に大事です!
私が受けたアドバイスは「なるべく自分のことをよく知っていて、定量的に実績を判断してくれる人が良い」というもの。

私は以下の先生方にお願いしました。

  1. 学部時代の指導教官
  2. シンガポールで研究インターンをした際の上司
  3. プリンストンでの受け入れ先研究室の教授

いずれの方も私の研究能力や勉強姿勢などを十分な時間見て下さったという判断のもとにお願いさせていただきました。依頼のメールは10月末に差し出したと思います。一般的に出願は12月から1月になるので、突然すぎる連絡になってしまわないように留意しました。(推薦書では先生方の手を煩わせることになります。失礼のないようにするのが一番です!)

 

流れをまとめると、

  1. GRE受験(~8月、11月)
  2. SoP執筆(10月~12月)
  3. 推薦書依頼(~10月末)

といったところでしょうか。

ここまで整えばあとは出願するのみです! 次回では私の出願結果、それを受けての自己反省や最終的にウォータールー大学を選んだ理由を書いていきます!

それでは!

留学挑戦記③:出願期の長い道のり Part1

こんにちは!Kohdaiです。

さて、より厳しく充実した環境の下で「量子情報」という分野を研究したいと考え、Waterloo大学を志願した私でしたが、出願は非常に長い道のりになりました。今回はその出願の様子について書いていけたらと思います。

さて、私がたどった出願のプロセスは大きく分けて次の通りです。

  1. 出願校、志望指導教員のリスト作成
  2. テスト受験(GRE)
  3. 推薦状依頼
  4. Statement of Purpose 作成
  5. 出願

案外ステップが多そうに見えますね……。事実、出願は一年に渡る大仕事でした。

さて、私がどのように出願のプロセスを辿っていったのかを、反省を交えながら綴っていきたいと思います。

 

①出願校、志望指導教員のリスト作成

出願校のリスト作成は私にとって非常に大きな関門でした。(後に友人に聞いた話でもここが一番大変だったようです。)

私が出願校を考えるうえで最も重視したのは、「やりたい研究をやっている研究室があること」でした。学位留学の道を選択した場合、入学後5-6年間志望した研究室で研究に没頭することになります。それはつまり、5-6年という長い年月の間、「他のやりたいこと」の可能性を狭めるという意味です。研究室や指導教官を調べる際、「本当に私にはこれをやり続ける覚悟があるのか」を常に考えながら調べていました。

(現在の指導教官と出願前に話した際にも、実は同じアドバイスを受けました。「あなたの5-6年ものの人生を費やすんだから、研究分野はしっかり選んだほうが良いですよ」と。)

 

リスト作成は以下のような流れで行いました。

  1. 「量子情報分野」の論文のリサーチを行う。
  2. 興味がある分野の有名な論文を集め、さらにそこからさかのぼる形で先生の論文リスト調べる。
  3. 論文リストを見て、先生の研究分野を面白そうだと思ったら先生の研究室のwebページを調べる。
  4. 研究室のwebページに記載されている先生の「現在の興味、研究対象」に興味がわいたら、志望指導教官のリストに加える。

文章にして書いてしまえば簡単なようですが、このプロセスが中々に大変でした…。

また、先生を調べる際、その先生が学生を取る意思があるかどうか確かめるため、また自分をアピールするため、私は先生にCVを添付したメールを送っていました。

CVとはCurriculum Vitaeの略で、日本語で言う「履歴書」のことです。多くの場合自分の学歴、職歴、学業成績、研究実績などを記載します。

(書き方に関してはMcGill大学がpdfを公開しています:https://www.mcgill.ca/caps/files/caps/guide_cv.pdf

また、これ以外にもインターネット等で調べると多くのサンプルが見つかります)

 

さて、最終的に私のリストには5つの大学がリストアップされました。

実は5つしかリストアップしていなく、アメリカの大学が1つしかないというのは学位留学を志す学生の選択としてはなかなかに異例のようです。

 これは私が面白いと思った分野が、どちらかというとヨーロッパの方での方が盛んであることにも起因するようです。また、私が元々所属していた研究室での研究もかなり魅力的であり、日本に残る選択肢も私の中にあったから、というのも理由の一つだと考えています。

さて、これでようやくリストが完成したわけですが、まだまだ道のりは長いです。次回はGRE (Graduate Record Examinations:https://www.ets.org/gre/) の話から始めたいと思います。

GRE...?と思う方もいるかもしれません。これは海外大学院受験の際に必須となる試験です。次回詳しく解説します。

それではまた!

留学挑戦記②:Waterloo大学を志願した理由

こんにちは!Kohdaiです。

 

前回、学位留学を志した理由を記しましたが、今回はなぜWaterloo大学を志願したのかをお話していきたいと思います。

さて、海外で学位を取得する道を真剣に模索し始めた私ですが、海外の大学について、恥ずかしながらほとんど知識がありませんでした。(HarvardとかMITとか有名な大学の名前は知っているけど…、程度のものでした)

そこで、指導教官の先生にアドバイスを頂いたり、自分で調べたりしながら大学の情報を仕入れていったのですが、そこで重視したのは、

自分の研究分野を考えて、ベストな大学を選択する

ということでした。

指導教官からかけてもらった次のアドバイスが、私の指針を決めるうえで大きな助けになりました:

「当然有名大学に進むのはキャリア上とても大事だけれど、それよりも自分の分野を見定めて、良い指導者、良い研究環境があるところに行ったほうが良い」

 

私の研究分野は、「量子情報」と呼ばれる物理学の分野です。近年注目されている「量子コンピューター」に関連する分野で、IBMやGoogleなど、企業が量子コンピューターの実現に向け参入してくるなど、研究が年々活発化しています。

これを踏まえて、Waterloo大学を選んだ理由は二つ。

  1. 量子情報の非常に充実した研究所(Institute for Quantum Computing)があること
  2. 近隣に研究関係のStartupも多くあり、産業との連携も図れそうだったこと

 

1について、Waterloo大学は非常に量子技術の研究に力を入れており、Quantum Valley (https://quantumvalleyinvestments.com/)という構想の下、量子技術研究拠点が大学周辺に集中しています。

 現在私が所属しているのは、Institute for Quantum Computing (IQC) という研究所なのですが、ここでは、

  • 純粋数学
  • 応用数学
  • 物理学
  • コンピューターサイエンス
  • 化学

といった多様な分野の研究者、学生が、実験・理論を問わず日々同じ建物内で研究をしています。研究においては、様々な人とコミュニケーションを取り、議論を行うことが必要不可欠です。そういう意味で、多くのバックグラウンドを持つ研究者が、「量子情報」の研究のために一堂に会すこの場所は、私にとって非常に魅力的に映りました。事実、進学した現在となっては、IQCに決めて良かったと思っています。

 

2について、Waterloo大学は非常に産学の結びつきが強く、学生が企業でインターンを行う制度が非常に充実しています。(Co-operative education: https://uwaterloo.ca/co-operative-education/

それと関連して、大学近くに多くのStartup企業があるのですが、大学と協力した量子情報関係のStartupも多く存在します。こうした風土の中で、産業との連携を図った研究にも手を伸ばせそうだと感じたのが二つ目の理由です。

(現在こちらのメリットについては生かしきれずにいますが......)

 

こうした理由からWaterloo大学は私にとって非常に魅力的な進学先となり、私の第一志望となりました。

こうして進学先の指針を定めた私でしたが、出願のプロセスは大変困難なものになりました。次回は出願、結果についてお書きしたいと思います。

それでは!